建築面積と建ぺい率は、建築基準法の中でも、初歩的な項目のひとつです。
行政によって取扱いが異なるようなことはまずあり得ませんが、算定方法については注意しておくべきポイントがいくつかあります。
正しく建築面積を算定できるように、まずはキホンのキを確認しておきましょう。
建築面積の定義
建築面積は、施行令第2条第1項第二号で定められています。
建築物(地階で地盤面上1m以下にある部分を除く。以下この号において同じ。)の外壁又はこれに代わる柱の中心線(軒、ひさし、はね出し縁その他これらに類するもので当該中心線から水平距離1m以上突き出たものがある場合においては、その端から水平距離1m後退した線)で囲まれた部分の水平投影面積による。ただし、国土交通大臣が高い開放性を有すると認めて指定する構造の建築物又はその部分については、その端から水平距離1m以内の部分の水平投影面積は、当該建築物の建築面積に算入しない。
出典 : 施行令第2条第1項第二号
>>>平5建告1437 (国土交通大臣が高い開放性を有すると認めて指定する構造)
ここで注意しておきたいのは、「外壁又はこれに代わる柱の中心線」という文章です。
ポーチ部などに独立柱がある場合は、建築面積の算定対象となり得るということです。
小規模な建築物では、建ぺい率がギリギリになることがあるので、一戸建ての住宅でポーチを設ける場合などは、特に注意が必要です。
水平投影面積とあるように、建築物を真上から見下ろすイメージを持ってください。
軒、ひさし等のはね出している部分については、一定範囲を建築面積に算入しないことになっていますが、ここでは「先端から1m」というキーワードだけ覚えておいてください。
建ぺい率の定義と限度
建ぺい率は、基準法第53条第1項で定められています。
建築物の建築面積(同一敷地内に2以上の建築物がある場合においては、その建築面積の合計)の敷地面積に対する割合(以下「建ぺい率」という。)
出典 : 基準法第53条第1項
つまり、「建ぺい率=建築面積÷敷地面積」ということです。
基準法第53条第1項では、用途地域ごとの建ぺい率の限度が述べられています。
- 商業地域:80%
- 用途地域の指定のない区域:都道府県都市計画審議会の議を経て定めるもの
- その他:都市計画において定められたもの
おおまかに、商業系80%、住居系・工業系60%と覚えておくとよいです。
(第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域は、40%であることが多々あるので注意してください。)
もちろん、設計の際には必ず用途地域を調べて、建ぺい率を確認しておきましょう。
建ぺい率には、角地緩和と耐火建築物緩和がある
角地緩和
一般的に角地緩和と呼ばれるもので、基準法第53条第3項第二号で定められています。規定の建ぺい率の限度に、10%加算することができます。
街区の角にある敷地又はこれに準ずる敷地で特定行政庁が指定するものの内にある建築物
出典 : 基準法第53条第3項第二号
角地は、行政によって取扱いが異なるので、角地緩和を利用したい場合は確認しておきましょう。
>>>(建ぺい率の角地緩和における各行政の取扱い総まとめ) ※準備中
耐火建築物緩和
防火地域内にある耐火建築物に対する緩和で、基準法第53条第3項第一号、第5項第一号で定められています。規定の建ぺい率の限度に、10%(第3項第一号に該当)若しくは20%(第5項第一号に該当)加算することができます。
第1項第二号から第四号までの規定により建ぺい率の限度が8/10とされている地域外で、かつ、防火地域内にある耐火建築物
出典 : 基準法第53条第3項第二号
第1項第二号から第四号までの規定により建ぺい率の限度が8/10とされている地域内で、かつ、防火地域内にある耐火建築物
出典 : 基準法第53条第3項第二号
角地緩和と、第3項第一号の耐火建築物緩和の両方に該当する建築物は、10%+10%=20%が建ぺい率の限度に加算されます。
この他にも、用途地域や防火地域をまたぐ場合や、隣地境界線から後退して壁面線の指定がある場合、「巡査派出所」「公衆便所」「公共用歩廊」などの建築物の場合における、建ぺい率の取扱いが定めれているので、一度は基準法第53条に目を通しておきましょう。
>>>建築基準法 第53条「建ぺい率」
建築面積と建ぺい率の基本のまとめ
設計の建築実務にたずさわる方は、早い段階で面積関係の考え方を勉強するのではないでしょうか。
しかし、過去の事例や一般的な取扱いから建築面積の算定方法を学んだ場合、キホンのキが書かれている法令集をしっかり見たことがないこともめずらしくありません。必ずご自分で法令集を読んでいただきたいですが、要点をまとめておきますのでご活用ください。
- 建築面積とは、外壁又はこれに代わる柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積
- はね出し部分については、先端から1mの範囲が対象外
- 建ぺい率=建築面積÷敷地面積
- 緩和規定を利用すると、建ぺい率の限度が10%若しくは20%プラスされる。