建築面積と建ぺい率は、建築基準法の中でも、初歩的な項目のひとつです。
行政によって取扱いが異なるようなことはまずあり得ませんが、算定方法については注意しておくべきポイントがいくつかあります。
正しく建築面積を算定できるように、まずはキホンのキを確認しておきましょう。
床面積と延べ面積の定義
床面積は、施行令第2条第1項第三号で定められています。
建築物の各階又はその一部で壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積による。
出典 : 施行令第2条第1項第三号
この後に説明する「延べ床面積」で触れますが、建築基準法には、床面積が2種類あります。
容積対象床面積と容積対象外床面積です。
また、建築工事の見積もりでつかわれる「施行床面積」もあるので、実務では3種類の床面積を求めることになります。
水平投影面積とあるように、建築物を真上から見下ろすイメージを持ってください。
ピロティ、吹きさらしの廊下、屋外階段等の床面積の算定及び区画の中心線の設定について、地方により統一を欠く向きがあるという趣旨から、通達が公布されています。
>>>(床面積の算定方法について)
延べ面積は、一般的に延床面積とも言われ、施行令第2条第1項第四号で定められています。
建築物の各階の床面積の合計による。ただし、法第52条第1項に規定する延べ面積(建築物の容積率の最低限度に関する規制に係る当該容積率の算定の基礎となる延べ面積を除く。)には、次に掲げる建築物の部分の床面積を算入しない。
出典 : 施行令第2条第1項第四号
基準法第52条は、「容積率」について述べられている条文です。
その容積率を算定するための延べ面積に算入するか否か(=容積対象か容積対象外か)によって、先に述べたように床面積の種類を区別します。
「建べ面積=容積対象面積+容積対象外面積」と覚えておきましょう。
容積率の定義と、用途地域による容積率の限度
容積率は、基準法第52条第1項で定められています。
建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合(以下「容積率」という。)
出典 : 基準法第52条第1項
つまり、「容積率=延べ面積(容積対象床面積)÷敷地面積」ということです。
基準法第52条第1項では、用途地域ごとの容積率の限度も述べられています。
おおまかに、次のように覚えておくとよいです。
- 第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域:100%
- その他の住居系・工業系:200%
- 商業系:400%
もちろん、設計の際には必ず用途地域を調べて、容積率を確認しておきましょう。
この他にも、高層住居誘導地区や用途地域の指定のない区域についても述べられているので、計画地が当該地域・地区にある場合は、法第52条を確認してください。
前面道路の幅員によっては、容積率の限度が減少することも
基準法第52条第2項では、前面道路の幅員による容積率の限度が述べられています。
前項に定めるもののほか、前面道路(前面道路が2以上あるときは、その幅員の最大のもの。以下この項及び第12項において同じ。)の幅員が12m未満である建築物の容積率は、当該前面道路の幅員のメートルの数値に、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める数値を乗じたもの以下でなければならない。
出典 : 基準法第52条第2項
前面道路の幅員が12m以上あるほうが少ないと思われるので、必ずこちらの条文による容積率の限度も確認してください。
前面道路の幅員に乗じる数値は、次のように覚えておくとよいです。
- 商業系・工業系:道路幅員×0.6
- その他の地域:道路幅員×0.4
よくある落とし穴が2パターンあります。
これらの場合は、容積率の限度が減少するので、特に注意するようにしましょう。
- 指定容積率400%の商業地域で、前面道路の幅員が6.7m未満
- 指定容積率200%の住居系地域で、前面道路の幅員が5m未満
※指定容積率:用途地域の種別によって定められた容積率の限度
基準法第52条では、容積率について、第1項~第15項まで条文があるので、一度は基準法第52条に目を通しておきましょう。
>>>建築基準法 第52条「容積率」
容積率の限度は、数値が小さいほうが採用される
先にも述べたように、容積率の限度は減少することもあります。
指定容積率と前面道路の幅員による容積率では、数値が小さいほうが採用されるということを必ず覚えておいてください。
指定容積率と前面道路の幅員による容積率では、数値が小さいほうが採用される
床面積と容積率の基本のまとめ
設計の建築実務にたずさわる方は、早い段階で面積関係の考え方を勉強するのではないでしょうか。
しかし、過去の事例や一般的な取扱いから床面積の算定方法を学んだ場合、キホンのキが書かれている法令集をしっかり読んだことがないこともめずらしくありません。必ずご自分で法令集を読んでいただきたいですが、要点をまとめておきますのでご活用ください。
- 床面積とは、建築物の各階又はその一部で壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積
- 延べ面積=容積対象床面積+容積対象外床面積
- 容積率=延べ面積(容積対象床面積)÷敷地面積
- 前面道路の幅員によっては、容積率の限度が減少することもある。
- 指定容積率と前面道路の幅員による容積率では、数値が小さいほうが採用される