RC造マンションにおける階段の平面計画

建築物によって、階段の形態が異なるのは当たり前です。
しかし、どの建築物でも基本設計の段階で、ある程度のあたりをつけて寸法や配置を決めています。
この記事では、RC造マンションを例にして、階段の平面計画における基本を学びましょう。

平面計画における必要寸法

階段の一般的な構造基準は、施行令第2章第3節(第23条~第27条) で定められています。
基本的な寸法を定めている令第23条は、特に押さえておくべき条文になります。

マンション(基準法では共同住宅)の場合、令第23条第1項の表の(3)又は(4)が該当します。
開放性を確保して屋外階段とすれば、「階段及びその踊場の幅」が90cm以上に緩和されます。

令第23条第1項の表の一部

階 段 の 種 別
階段及び
その踊場の幅
(単位 cm)
けあげの寸法
(単位 cm)
踏面の寸法
(単位 cm)
(3) 直上階の居室の床面積の合計が200㎡を超える地上階又は居室の床面積の合計が100㎡を超える地階若しくは地下工作物内におけるもの 120以上
(90以上)
20以上 24以上
(4) (1)から(3)までに掲げる階段以外のもの 75以上 22以上 21以上

屋内階段と屋外階段それぞれについて、共用廊下に対して、縦付きの場合と横付きの場合、それぞれの参考寸法は下図のようになります。

(図 準備中)

仮に、(4)に該当した場合でも、使用上は有効幅員が90cm以上であることが望ましいです。

歩行距離と重複距離の検討

令第120条では、居室の各部分からの歩行距離が一定値以内となるように、直通階段を設置しなければならないとされています。
また、令第121条では、2以上の直通階段を設ける場合、重複区間を歩行距離の規定値の1/2以下とするように定められています。

条文の解説は省きますが、マンションの場合、基本的に歩行距離を50m、重複距離を25mとして検討しておけば問題ありません。
ただし、15階建て以上の場合は、歩行距離の規定値が40mとなるので、令第120条第2項の緩和も頭に置いておきましょう。

 主要構造部が準耐火構造であるか又は不燃材料で造られている建築物の居室で、当該居室及びこれから地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路の壁床面からの高さが1.2m以下の部分を除く。及び天井(天井のない場合においては、屋根)の室内に面する部分回り縁、窓台その他これらに類する部分を除く。の仕上げを準不燃材料でしたものについては、前項の表の数値に10を加えた数値を同項の表の数値とする。ただし、15階以上の階の居室については、この限りでない。

 15階以上の階の居室については、前項本文の規定に該当するものを除き、第1項の表の数値から10を減じた数値を同項の表の数値とする。
出典 : 施行令第120条第2項、第3項

運営者の経験では、歩行距離がクリアしていても、重複距離が25mを超えることが多々あります。
その際にも、15階未満であれば、第2項の緩和を利用して、重複距離を5mプラスした30mで検討すれば、ほとんどの場合クリアできるはずです。

避難階段の場合、確認項目が増える

令第123条に、「避難階段及び特別避難階段の構造」が定められています。
屋内避難階段と屋外避難階段に分けて、押さえておくべきポイントをまとめておきます。

屋内避難階段

第1項に、屋内に設ける避難階段の構造が定められています。

第一号~第三号、第七号は、RC造であれば、基本設計の際に検討していなくても対応できます。
注意すべきは、第四号~第六号、特に第六号については必ず確認しておかなければいけません。

  • 第四号:階段室の屋外に面する開口部について(離隔距離90cm
  • 第五号:階段室の屋内に面する窓について(1㎡以内のはめごろし戸、かつ、防火設備)
  • 第六号:階段に通ずる出入口について(遮煙性能を有する防火設備、開き勝手は避難方向)

屋外避難階段

第2項に、屋外に設ける避難階段の構造が定められています。

第三号は、RC造であれば、基本設計の際に検討していなくても対応できます。
第一号については、「建築物の防火避難規定の解説」で3ページにおよび解説されています。概要としては、階段から2m以内に開口部を設けてはならないというものです。
第二号は、屋内避難階段における第六号と同じ内容です。

また、屋外避難階段の場合、令第128条で「敷地内の通路」が求められますので、屋内を通らない形で幅員1.5m以上の避難経路を設けなければなりません。(屋内を通る場合の取扱いについては、行政によって違いがあります。)

  • 第一号:階段に通ずる出入口以外の開口部について(離隔距離2m
  • 第二号:屋内から階段に通ずる出入口について(遮煙性能を有する防火設備、開き勝手は避難方向)
  • 令第128条:敷地内の通路について(幅員1.5m以上の通路)

第二号では、「屋内から」階段に通ずる出入口とされているように、屋内廊下に取り付く屋外避難階段を想定しています。行政や審査機関によって違いはありますが、開放廊下の場合、一般的に、遮煙性能を有する防火設備の設置は不要である代わりに、廊下の天井面から350mm以上の垂れ壁(防煙用)が求められます。

屋内避難階段、屋外避難階段とも、上記は概要ですので、詳細については、条文や参考書籍を読むようにしてください。
避難階段については、別の記事でまとめます。

RC造マンションにおける階段の平面計画のまとめ

階段の平面計画では、まず、令第23条で基本的な寸法を押さえて、階段のサイズを決めます。その後、令第120条・第121条の歩行距離・重複距離から、階段の配置を検討します。さらに、避難階段である場合は、開口部の仕様や離隔距離を確認しましょう。

階段の平面計画のまとめ
  • 基本的な寸法は、幅120cm(90cm)・蹴上20cm以下・踏面24cm以上
  • 歩行距離は50m以下、重複距離は25m以下(緩和規定あり)
  • 避難階段の場合、開口部の仕様離隔距離を確認

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